①圃場準備と施肥
ロータリー耕で耕起整地、適正施肥をします(酸度矯正が必要な場合は、苦土石灰を100kg/10a程度散布)。糞尿の大量施用は、倒状の発生要因や硝酸態窒素の蓄積などの要因となりますので、注意してください。
②播種適期・播種量
〇南東北・関東 9月下旬~10月中旬
〇関東以西 9月下旬~10月下旬
〇四国・九州 10月上旬~11月上旬
西南暖地の極端な早生系の早まきは、いもち病を誘発するおそれがあります。対策として、高温期の播種を避け、9月中旬以降に播種するようにしてください。一般的に晩生品種の方が羅病しにくい傾向にあるので、ムサシ、ジャイアントを推奨します。
③播種方法
ブロードキャスター、ライムソワーなどで播種します。播種後は浅耕ロータリー、ローラー鎮圧を必ず行います。
④雑草対策
ホトケノザ、ナズナなどの常発畑では、播種量を増量することで耕種的防徐が可能です。(5~7kg/10a程度)
⑤冬期ムギダニ対策
イタリアンライグラスを中心に、晩秋から春季にかけてムギダニが多発しています。被害が甚大になりますと、イタリアンライグラスの葉は黄化し、やがて枯死に至ります。被害を防ぐために適期播種を心掛けましょう。被害状況により、収量的な回復が見込めない場合は、播き直しを行います。アーリーキング、ニューオーツの導入が適します。また、薬剤による対策として、スミチオン乳剤(1000倍)の噴霧を遅くともイタリアンライグラス収穫の1ヵ月前までに終えるようにしてください。
※倒状防止対策
※イタリアンの播き遅れ対策
●イタリアンの適期播種が遅れる原因として
①秋の長雨や台風などによる夏作物の生育、収穫遅れ。
②稲ワラの収集期作業の競合。
●その対策として
ジャイアント、ムサシなど中晩生~晩生品種が、播種期幅による収穫変動が少なく、安定しています。
早生系品種では、低温の伸長性や収穫までの生育期間が限定され、乾物量が低くなります。
※播種量のポイント 4~6kg/10a やや多めとします。
収穫利用 ※出穂初に刈り取り始めると、嗜好性もあがります。
Ⓐロールベール+ラッピングの場合
出穂初~出穂期に刈り取り、半日~1日予乾後、水分60%位に調節し、ロールベーラーで巻き、ラッピングします。出穂期以降では、乾物収量は高くなりますが、消化性、嗜好性は低くなります。
Ⓑ乾草利用の場合
草丈80cmを目安に、好天を見計らってモアコン等で刈り取り、乾燥を促進させ、梱包します。
Ⓒ青刈り利用の場合
出穂期以前に刈り取ると、再生が良好となります。4倍体品種のジャイアントのほか、ムサシをおすすめします。
《イタリアンライグラスの主要特性》 ◎最適・極強 〇適・強 △やや不適・弱
商品名 | 早晩性 | 耐寒性 | 耐雪性 | 耐病性 | 春播適性 | 耐倒伏性 | 草丈cm | 一番草 | 二番草 | 利用法 | 利用型 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
生草収量 kg/10a | 乾物収量 kg/10a | 生草収量 kg/10a | 乾物収量 kg/10a | サイレージ | 乾草 | 短 | ||||||||
あかつき | 極早生 | 〇 | 〇 | ◎ | △ | ◎ | 90 | 6,800 | 1,200 | 4,000 | 680 | ◎ | ◎ | 短 |
ゼロワン | 早生 | 〇 | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | 115 | 7,500 | 1,100 | 4,200 | 700 | ◎ | ◎ | 短 |
ライジン | 早生 | 〇 | 〇 | ◎ | 〇 | ◎ | 120 | 8,500 | 1,500 | 4,200 | 700 | ◎ | ◎ | 短 |
いなずま | 早生 | 〇 | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | 115 | 8,000 | 1,400 | 4,000 | 680 | ◎ | ◎ | 中 |
さつきばれEX | 中生 | 〇 | 〇 | ◎ | △ | ◎ | 140 | 9,000 | 1,700 | 4,500 | 1,000 | ◎ | ◎ | 中 |
エクセレント2 | 中生 | 〇 | 〇 | ◎ | △ | ◎ | 140 | 8,900 | 1,700 | 4,500 | 1,000 | ◎ | ◎ | 中 |
ゆきつよし | 中晩生 | 〇 | 〇 | ◎ | △ | 〇 | 140 | 8,800 | 1,700 | 4,500 | 1,000 | ◎ | ◎ | 中 |
ジャイアント | 中晩生 | 〇 | 〇 | ◎ | △ | 〇 | 140 | 8,500 | 1,300 | 4,500 | 900 | ◎ | 〇 | 中 |
ムサシ | 晩生 | ◎ | ◎ | ◎ | △ | 〇 | 125 | 9,000 | 1,300 | 5,600 | 900 | ◎ | 〇 | 長 |
ダイマジン | 晩生 | ◎ | ◎ | ◎ | △ | 〇 | 125 | 9,100 | 1,350 | 5,650 | 950 | ◎ | 〇 | 長 |
※収量につきましては、地域・天候・収穫時期により異なりますので目安とさせて頂きます。
《イタリアンライグラスの出穂期表》 (関東標準・秋播き)
4/10 | 4/20 | 5/1 | 5/10 | 5/20 | ||||||
イタリアンライグラス | あかつき | |||||||||
ゼロワン | ||||||||||
ライジン | ||||||||||
いなずま | ||||||||||
ニオウダチ | ||||||||||
ワセアオバ | ||||||||||
さつきばれEX | ||||||||||
エクセレント2 | ||||||||||
ゆきつよし | ||||||||||
ナガハヒカリ | ||||||||||
ジャイアント | ||||||||||
ムサシ | ||||||||||
ダイマジン |
イタリアンライグラス 公的機関育成品種
ニオウダチ(イタリアンライグラス農林17号) (品種名 ニオウダチ) 育成機関:畜産草地研究所 早生品種。耐倒状性は強い。 収穫ロスが少ない。 適地:関東以西 |
ワセユタカ(イタリアンライグラス農林5号) (品種名 ワセユタカ) 育成機関:山口県農業総合技術センター 早生品種。草型は直立型。 葉幅がやや広く、茎が太い。 適地:関東以西 |
ヒタチヒカリ(イタリアンライグラス農林16号) (品種名 ヒタチヒカリ) 育成機関:茨城県畜産センター 晩生品種。冠さび病抵抗性が強く、採草に適している。 適地:南東北から九州(積雪地帯は除く) |
ワセアオバ(イタリアンライグラス農林3号) (品種名 ワセアオバ) 育成機関:中央農業総合研究センター北陸研究センター 早生品種。収量は安定している。乾物率も高く、サイレージ及び乾草に最適。 適地:関東及び北陸以南 |
ナガハヒカリ(イタリアンライグラス農林13号) (品種名 ナガハヒカリ) 育成機関:中央農業総合研究センター北陸研究センター 中晩生品種。耐雪性及び耐倒状性が強い。サイレージ、青刈り及び乾草に適している。 適地:積雪日数90日程度までの積雪地及び中部以西の高標高地帯 |
さちあおば(イタリアンライグラス農林19号) 登録品種 (登録名 さちあおば) 育成機関:山口県農業総合技術センター 極早生品種。いもち病に対して中程度の抵抗性を持つ。 適地:西南暖地 |
飼料イネの裏作に肉用牛の放牧利用が普及しています