[581]カニ酢?キチン酢?キトサン酢??
園芸農業現場でキチン質やキトサンが病害を予防するということで、食べた後のカニガラを酢に漬け込んで利用する、という記事がネット上に散見されます。
カニを食べたあとの殻を有効利用する点ではよろしいかと思いますが、これがキチンとして活用できるか?、あるいはキトサンとして活用できるか?、を考えてみたいと思います。
カニを食べた後にお出る殻=カニガラをお酢につけるとどうなるか?
カニガラはカルシウム分を含みますので、お酢につけることでカルシウム分が溶解します。シュワシュワと泡が出ます。
この時にできる液体を「キチン酢」と呼ぶことがありますが、残念ながらキチン質がお酢に溶けてはいません。
キチンはお酢には溶けませんので個体として残ります。
しかし、この液体はカルシウム酢、とは言えます。
ではこのカルシウム酢を撒くと、どうなるか?
お酢に含まれる酢酸は静菌作用がありますので、うどん粉病などの糸状菌による病害は減るかと思います。
※お酢は特定防除資材=特定農薬
また水溶性のカルシウムですので、吸収良く肥料になります。
なので、無駄にはなりません。
ですが、キチン質の効用は残念ながら期待はできません。
〇キチン・キトサンの効用:
・葉面散布、土壌灌注により樹木、花、野菜類の免疫力を高めます。
・細胞を活性化し、作物に活力を与えます。
・抵抗力がつくため減農薬、減肥が可能となります。
・生育旺盛になり、品質向上、増収に貢献します。
キチン質は強固な分子構造をもった物質ですので溶かすには大変です。
カニガラを酸で処理し、できたキチン質を今度は強アルカリで処理することでキトサンになります。
キチンは溶けませんがキトサンは家庭でも安全に使えるお酢やクエン酸で簡単に溶かすことができます。
お酢で溶かしたキトサン溶液は、水溶性ですので、植物に吸収され、園芸農業現場で活用することができます。
なお、キチンを強アルカリで処理した後、アルカリ分を抜く作業があり、これは危険が伴うので素人にはちょっと難しいです。
なので、安全に使えるキトサン、もしくはキトサン溶液を使いましょう。
キトサン溶液を散布すると、まず酢酸の威力で病害が減ります。
その後、キトサンを餌に放線菌が増え、病害が発生しにくい栽培環境を作り出します。
安全に使えるキトサン溶液を有効利用しましょう。
《ポイント》
・カニガラをお酢につけてもキチン酢にはならない
・だがその液体は酢酸カルシウム肥料としては使える
・キチンは容易には溶けないので溶けやすいキトサンを利用するのが良い