水耕栽培や植物工場など、肥料成分を水に溶かした養液を培地に循環させて栽培する方法が普及してきています。
この方法、土を使わないわけですから、必要な養分はすべてその養液で賄う必要があります。
植物にとって必要な「窒素、りん酸、加里」の多量要素は、それを含む肥料を与えていれば特段問題はありません。
そのほかに植物に必要なものに微量要素があります。
少量でいいけど必要なもの⇒微量要素
微量要素例:
Fe(鉄)、Mn(マンガン)、B(ホウ素)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Mo(モリブデン)
この微量要素は効かせるのが大変難しい。
というのも、水に溶かした時点でイオン化し、ほかの金属(物質)と結合しようとするからです。
結合してしまうと、他の物質に変化したり沈殿したりして効かなくなってしまうのです。
特に多量要素成分のリン酸があると、結合しやすい。
そこで、キレート化です。
キレートとはギリシャ語で「カニのハサミ」という意味で、必要な成分をアミノ酸や有機酸によってカニバサミのようにはさみ込んで守ることで、吸収されやすい形を維持することを言います。
例えば製品としてホーグス5号。
Mn(マンガン)成分は通常硫酸マンガンを使いますが、ホーグス5号はキレートマンガンを使用しています。
また、Cu(銅)成分は通常硫酸銅を使いますがホーグス5号はキレート銅を使用。
同様にZn(亜鉛)成分は硫酸亜鉛ではなくキレート亜鉛を使用しています。
他の物質と結合しにくいキレート化された成分を使うことで、しっかり微量要素を効かせます。
微量要素剤はどれも同じではないんですよ。
【ご参考】
肥料に使われるキレート剤はEDTAがよく使われます。
EDTA=ethylendiaminetetraacetic acidの略
日本語ではエチレンジアミン四酢酸と呼びます。
EDTA錯塩の大きな特長は、この錯塩が非常に安定であるのと同時に水によくとけるということです。たとえば硫酸銅の水溶液にEDTAを加えると、溶液中の銅イオンはEDTAと安定な錯塩を生成するため、この溶液について普通の銅イオンの定性反応を試みても銅イオンを検出することができません。しかもこの錯塩は水溶性ですからEDTAを添加したときも沈殿は生じません。このようにEDTAは沈殿を生じたり強く着色したりすることなく水溶液中の多くの遊離金属イオンと結合し、これらの金属イオンを不活性にしてしまう特性をもっているのです。そのため現在ではEDTAは分析化学のみならず化学工業全般にわたって広く用いられるようになったのです。