そろそろ秋の稲刈りが始まっています。
新米が楽しみですね。
稲を刈った田んぼをみると、刈り取った株が残っています。
これを稲株(イナカブ)といいます。
この稲株は来年の田植えまでに腐熟分解しておく必要があります。
時間はたっぷりある?といえども温度の低い秋冬での分解は容易ではありません。
そこで、農家さんでは通常、消石灰などを撒き、酸度調整を兼ねて分解させます。
消石灰はアルカリなので、たんぱく質を分解する作用があるからです。
消石灰はカルシウムが主体ですが、カルシウム資材としてではなく、
- 有機物分解と
- アルカリによる消毒と
- 酸度調整が目的です。
じつは消石灰よりもっといい資材があります。
石灰窒素です。
有機物を腐熟させるには微生物の働きが必要ですが、微生物の増殖には、主な栄養源である炭素と窒素の比率=炭素率のバランスが大切です。
稲株は炭素率が高いので微生物のえさとしては厄介です。
そこで、石灰窒素の出番。
石灰窒素は石灰と農薬を併せ持つ資材です。
石灰は消石灰と同じ機能ですが、併せ持つ農薬としての機能は…
- 雑草の発芽及び幼少雑草の防除等の効果。
- 農薬成分が土壌病害虫の発生を軽減。
- 残留性がほとんど無くポジティブリストから除外されており農薬登録されているため農林水産省がその安全性を確認しています。
この農薬の成分が分解されて窒素になるので「石灰窒素」という名がついています。
石灰窒素の石灰はアルカリで分解腐熟を推進し、
さらに、含まれる窒素で窒素飢餓になりがちな微生物に補給するというわけ。
稲株の炭素率(C/N比)は50~70%ですから、これに窒素(N)を追加して炭素率を30%前後まで落とすと微生物の増殖が早くなり腐熟が進みます。
また石灰窒素を施用すると、地温が高くなるため、分解のスピードアップに役に立っているようです。