[113]水稲における塩化カリの追肥(放射性セシウム対策)

カリウム肥料といえば塩化カリと硫酸カリ。塩化カリは作物の繊維質を増やしイモ類などは食味を悪くしますので畑にはあまり使いません。一方で硫酸カリは田んぼに使うと硫酸根によって硫化水素を発生させることがあるので、水稲ではあまり使いません。ということで、水稲には塩化カリを使います。

塩化カリ

塩化カリ

去年の福島県原発事故の影響で、稲作では放射性セシウムの吸収が気になりますが、このセシウムに先立ってカリウムを摂取させることで、作物が取り込む放射線量を減らすことができます。放射線が気にならない地域でも、稲のカリウム摂取の時期がわかるので参考にしていただければと思います。

以下福島県の情報を元に、その方法をお知らせします。

◆カリの施用時期について

水稲のカリウム吸収量は、移植直後より徐々に増加し、移植後1ヶ月頃より急激に増加し、幼穂形成期頃に吸収速度のピークを迎え、やがて出穂期を過ぎる頃には吸収をほぼ完了するという報告があります。
(東北農業研究62号「水稲の最適NPK吸収速度推移についての一考察」)

このことからカリの施用に当たっては、基肥で十分な量を確保しておくことは言うまでもありませんが、出穂前45日~15日前に焦点を絞り、追肥を行うことが放射性セシウム対策上、最も重要であると考えます。

<追肥のポイント>

・追肥量については、慣行施肥量では2㎏/10aですが、上記を考慮し、4㎏/10a(以上)を目安として設計することをお奨めします。特に、砂質土壌ではカリが溶脱しやすいので、多めに設計することが大切と考えます。

※塩化加里は60%のカリ量を含みますので、20kg袋の場合はその60%の12kgがカリの量です。

・効果的な追肥時期は移植後1ヶ月頃から幼穂形成期頃までと考えられます。
・肥料選定に当たっては、塩化カリは水溶性であり即効的ですが、溶脱しやすいので多量施用する場合は2回施肥とします。

<塩化カリ施用例>

・1回追肥の場合は、出穂前35~30日前が適期となります。
・2回追肥の場合は以下が適期となります。
1回目…田植え後1ヶ月あるいは出穂前40日頃
2回目…出穂前20~15日

《例》1回追肥

田植え(5/10)
55日目(7/5)~60日目(7/10)に塩化カリ追肥
90日目(8/10出穂)

《例》2回追肥

田植え(5/10)
30日目(6/10)~50日目(6/30)に塩化カリ1回目追肥
70日(7/20)~75日目(7/25)に塩化カリ2回目追肥
90日目(8/10出穂)

※硫酸カリ、ケイ酸カリの場合はく溶性のため、施用方法は異なります。
※塩化カリは水溶性で即効性がありますので、がっちり効かせて下さい。

【関連資材】
粒状・塩化カリ 20kg 放射性物質対策に

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